重症の歯周病の治療が難しいワケ

重症の病気ほど治すのは難しい。歯周病にもあてはまります。

歯周ポケットが深く、炎症は強く、さらに周囲の歯周組織は破壊されてぐらぐら動きはじめている歯。こういった状態で炎症をコントロールすることは大変困難です。

しかし、重症の歯周病の方の場合で最も問題になるのは「いかにかみ合わせの力をコントロールするか」ということです。

今回は、重症の歯周病の方のかみ合わせについて解説します。

重症の歯周病では歯が簡単に歯ならびが悪くなる

歯周病がひどくなって周囲の骨がなくなった歯は、支えが少なくなっていますので、健康な歯に比べて歯が動きやすくなります。特に炎症がひどい場合は簡単に動いてしまい、歯ならびが悪くなります。

前歯に隙間ができた、奥歯の歯と歯の間に食べカスがはさまりやすくなってしまう等の症状は、歯周病で歯が動いてしまうことから起こります。

歯が抜けた場所があると歯ならび全体が崩れる

歯周病やそのほかの理由で歯が抜けた場所があると、問題はさらに大きくなっています。歯ならび全体が崩れてしまっています。

隣り合わせの歯がなくなると、歯は失われた歯の方向に倒れこみます。下の歯がなくなると上の歯は下向きにのびてしまいます。
また、本来かみ合わせの力をさほど受けない前歯に強い力がかかり、前歯がさらに動いてしまいます。

歯周病治療後も咬合治療が必要です

歯周病を治療することで、歯の周囲の炎症は消え健康な状態になります。歯の動きはずいぶん減ってきますが、元々の骨支えが少ない場合は完全に治らないことがあります。かみ合わせの力に対して、残った骨の量では歯が十分支えきれない場合です。こうした状態では将来の歯周病の再発や歯を失う確立が高くなってしまいます。

重症の歯周病がある方を将来にわたって安定な状態にするためには歯周治療に加えて咬合治療が必要となります。

咬合治療は大がかりな被せ物の処置が必要です

個々の歯ではかみ合わせの力に対抗できない場合、複数の歯を被せ物でつないでしまい力をコントロールする方法があります。
土台となる歯を削り、全体の歯型をとって、歯の形を再現した大がかりな被せ物をつくります。出来上がった被せ物を歯に装着して固定します。
たくさんの歯を削ること、場合によっては歯の神経をとること、精密な歯型をとること、適合がよくしかも見た目にもよい被せ物をつくること等たいへん細やかな配慮の高度な技術を必要とします。