歯周病専門医 Dr.宮本の歯周病講座 その2

歯周ポケットの中で何がおこっているのか?

歯周病は歯周ポケットの中にすむ細菌による感染症です。
ただし、風邪のように細菌やウイルスに感染してたちまち症状が出る感染症とは異なります。慢性の感染症です。

歯周ポケットは歯と歯ぐきの継ぎ目に「くぼみ」あるいは「みぞ」として存在しています。口の中という元々細菌が多量にある場所、しかもくぼみやみぞは掃除が大変難しい場所ですので、どうしてもある程度の数の細菌がすみついてしまいます。
細菌が住んでいる場所では、当然人間の身体も自らを守るために必死にがんばっています。数多くの生体防御細胞と呼ばれる細胞が歯周ポケットの歯肉に集まって細菌がはいってくるのを防いでいます。

歯周ポケットは常に細菌の侵入がおこりかねない人間の身体の中でも最も弱い継ぎ目の組織です。その組織の中では細菌と生体との戦いが常に起こっているのです

細菌の感染が生体の防御に対して勝ってしまうと歯周病が発症してしまいます。

発症までの流れを生体の反応で見てみましょう。

(歯周病ってなあーに?中川政嗣著 岡山大学歯学部歯科保存学第2講座同門会発行を参考とさせていただきました)

プラークが歯周ポケットにたまります。歯周ポケットの中では細菌が住み始めその数を増やしていきます。大量の細菌が代謝物を出します。

これが口臭の原因となります。

大量の細菌や細菌が出す毒素によって歯肉の上皮細胞(歯肉粘膜の表層の細胞)は脆くなり一部は壊れてしまいます。

歯ぐきから出血しやすい状態になります。

細菌に対抗するためには生体防御細胞を歯周ポケットに送り込む必要があります。そのため歯肉の血管が太くなり、血管からは多量の細胞が出ていきます。

これにより歯ぐきが赤く腫れます

生体防御細胞のうちのひとつ好中球が活性化され、歯周ポケットに出ていきます。細菌を退治して役目を終えた好中球は自らを壊して膿(ウミ)となります。

歯ぐきから膿が出ます

「歯ぐきから出血する」や「歯ぐきが赤く腫れる」は歯周病のごく初期症状とされています。しかし、こういった初期の状態でも歯周ポケットの中では細菌と人体の壮絶な戦いが常に繰り広げられています。初期症状であっても人間のカラダはすでに精一杯頑張っているのです。


生体の頑張りを助けてやるためにもブラッシングや定期的なクリーニングによって細菌の数を少しでも減らしてやる必要があります。