高齢者の歯と歯ぐきがアブナイ

近年高齢者のむし歯が増えているというデータを出しました。同じく高齢者の歯周病も年々着実に増えています。答えは簡単です。近年高齢者の歯が増えているのです。調べるべき歯がなければむし歯も歯周病もゼロですから。8020(ハチマルニーマル)という言葉はご存じでしょう。80歳になった時20本の歯を残しましょう。そうすれば自分の歯だけで噛んで健康な生活を送れます、ということです。8020運動がはじまった平成元年(1989年)では80歳のうちたった7%の方しか20本の歯をもっていませんでした。前回の歯科疾患実態調査(2016年)では8020達成者がなんと50%を越えました(51.2%)。確かに私が歯科医師になりたての30数年前には、高齢者には総入れ歯ばかり作っていました。最近は総入れ歯を作る機会がぐんと少なくなっています。80歳代でズラリとご自身の歯をもっている方も普通にいらっしゃいます。

問題はどういった歯が残っているか?です。むし歯で大きな穴が開いている、歯冠といって生えている部分が崩壊したような歯が残っていても意味がありません。同じく歯周病でぐらぐら動いていて噛めない歯では意味がありません。現在は数ではなく残っている歯の質が重要になってきています。

むし歯でポッキリ折れそうな歯が残っていても・・・

これは特に介護が必要になった高齢者の間で大問題になっています。要介護高齢者はご自身で歯ブラシが出来なくなります。唾液が減ってお口の周りの筋肉の働きも悪くなるので、お口の中は余計に汚れてしまいます。こういった要介護高齢者に対しては「口腔ケア」が大切です。介護を担当する方が高齢者のお口の中をキレイにします。近年、要介護高齢者に対して口腔ケアを行うことによって、発熱しないようになったり、誤嚥性肺炎をになりにくくなったり、認知症の進行を抑えたり、インフルエンザに罹りにくくなったりすることが明らかになりました。介護の現場では口腔ケアは大変重要になっています。

口腔ケアは発熱発生を予防するだけでなく肺炎による死亡率も低下させる

要介護者に対して口腔ケアが有用なのは、口腔ケアによってお口に中の細菌をぐんと減らすことができるからです。要介護まではいたらないものの健康とは言えない状態、この状態をフレイルと呼びますが、このフレイルの時期にいかに健康な歯と歯ぐきを保つか、が将来、不快な事項を減らすために大変重要です。歯の寿命は近年明らかに伸びました。歯の健康寿命を延ばす、つまり健康な歯と歯ぐきをいかに長く保つことができるか、がこれからの高齢者には求められています。