歯周病検診を語ってみよう

神戸市では40歳、50歳、60歳になった方に対して歯周病検診を受けましょう、というご案内を送っています。歯周病は私の専門でもありますし、歯周病検診について語ってみましょう。と、言ったものの、実はコレが大変難しい。難しい原因は ①カンタンに正確に歯周病を診断する検査がない事、②軽症の歯肉炎はあまりにカンタンに起こる事にあります。

①カンタンに正確に歯周病を診断する検査がない

むし歯は穴があいている歯や治療が済んだ歯の数を目で見て健診します。目で見ただけの問題点は前項で指摘しましたが、とにもかくにもカンタンに調べることができます。一方、歯周病の状態を診るには CPI INDEX という指標を用います。この手法は、お口の中の指定された10本の歯を選んで歯周ポケットをプローブという器具で検査をします。歯科医院ではプローブを用いて歯科衛生士さんが検査を行いますが、歯科医院のチェアであればともかく、一般の場所では大変難しい作業になります。唾液を使った方法など様々な代替え法が提案されていますが、いまだプローブを使う古典的な方法しかありません。

②軽症の歯肉炎はあまりにもカンタンに起こってしまう

歯周病の初期段階は歯肉炎と呼ばれます。歯肉のみに炎症がある状態です。プローブで歯周ポケットを触った時に出血があれば、歯肉炎とされます。歯肉炎はちょっと油断していてもすぐに起こってしまいます。お口の中には大変な数の細菌が棲んでいますので、人間のカラダは常にフル稼働で頑張っています。そこで磨きにくい歯の歯周ポケットをプローブで触って出血する程度の初期の炎症が起こることは良くある事なのです。近年は1本の歯を6か所で検査した場合、すべての部位のうち10%以下の出血がある場合は、ほぼ正常と診断することになりました。10本の歯を選んで調べているCPI INDEXではこれは診断できませんので、少しでも出血があれば歯肉炎とされてしまいます。

結局歯周病検診では「要精密検査」という結果がたくさん出てしまいます。歯科医院で改めてしっかり歯周病の検査をしてもらいなさいよ、という結果です。厚労省は「要精密検査」が多発する歯周病検診に異議を唱えています。検診は病気を見つけるものだから、結果がもっと詳しい検査をしてもらいなさいよ、じゃダメだという理屈です。しかし、人体の継ぎ目が多くの細菌にさらされるために罹ってしまう歯周病という病気は、実に多くの方が罹ってしまう病気です。そういう病気において「要精密検査」が出てしまうのは現状では仕方ない事ではないでしょうか。

結論、歯周病は歯科医院でしっかり診てもらいましょう。