発想の転換

最近の日曜日はセミナーや勉強会に参加することが多くて、すっかりブログの更新が滞ってしまいました。

この日曜日は梅田で行われたGC友の会の学術シンポジウムを聴きに行ってまいりました。大阪市で開業されている浦野先生がお話されたPAOO法という新しい矯正治療について聴いておきたかったのです。

PAOO法(Periodontally Accerelated Osteogenic Orthodontics)という矯正治療は、矯正治療の歯の移動を効率的に行うために歯ぐき骨の手術を併用する方法です。この手法を使うと3年かかる矯正治療が1年あまりで終わってしまうという特殊な方法です。歯は骨に埋まっているわけですが、歯の移動を行う場合に歯槽骨(歯ぐきの骨)に切り目を入れて歯を動かしやすくするというわけです。以前から促進矯正(Accerelated Orthodontics)という名前で矯正歯科の分野では存在していた治療法です。ただし、歯ぐきの形が悪くなったり、なかには歯の神経が死んだりすることもあって、実際には文献のみでまったく行われていない手法でした。

インチョーが大学の矯正学の教室で勉強していた頃にアメリカからの特別講演でWilcko先生という方のお話を聴いたことがあります。その手法は歯ぐきの手術の時に骨補填材(骨の代わりになるような材料)を追加して行うという新しい手法でした。その時はほんとにこんなに上手くいくものか?とかなり疑ってかかっていましたが、浦野先生はその手法でかなりの症例をこなされていました。

浦野先生は歯周病がご専門ですので、矯正専門医とはまた違った観点から、この手法の利点を強調されていました。
すなわち「歯の周囲の骨を増やすことができる」という点でした。

歯をささえている骨に切り目を入れるから歯が動きやすくなるといった単純な反応ではありません。歯ぐきをめくって骨に切り目をいれると人間の身体は当然それを治そうとして様々な反応を示します。これを治癒反応といいます。

歯の周りでこういった反応が起こることによって歯は普段よりも早く動き、また歯の周囲の骨も改造現象が盛んに起こって骨補填材を取り込んで骨自身も分厚くなっていくようです。
わざと傷をつくって周囲の再生を促すという発想の転換です。

もしかするとこの手法はかなり革新的な治療となるかも・・・という感覚でした。
Wilcko先生疑ってかかってスミマセンでした。