ロシアンショック ー歯科用金属がヤバイー

日本の歯科医療でいわゆる「保険の銀歯あるいは詰め物」とされるものは正確には銀歯ではありません。金銀パラジウム合金という合金を使用しています。金12%、パラジウム20%、銀50%くらい、銅20%くらい、その他の金属という組成です。この合金は金合金に比べて安いから、という理由で日本の保険治療では重宝されていました。しかし、レアメタル問題はここ数年、たびたび繰り返されており、パラジウムの供給不足による金銀パラジウム合金の値段の高騰は歯科にとっても大きな問題でした。

そこにこのプーチンによるウクライナ侵攻!ロシアンショックによってロシアが主産地であるパラジウムがかつてない勢いで価格上昇しています。金銀パラジウム合金は30g単位で販売しているのですが、最近では10万円を超える値段で取引されています。インチョーが開業した2004年ごろでは10,000円以下であったので、実に10倍を軽く超える上昇率です。

保険治療では使用する金属の値段が急激に上がったからといって、治療費を急に変えるなんてことはできません。保険で決まっている値段しかいただけません。確かにここ数年歯科の「保険の銀歯や詰め物」の値段は上がりました。金属の値段を加味した保険点数(値段)の改正が行われているからです。しかし、現在の上昇率はあまりに急激で、改正がまったく追いついていません。

日本の数多くの歯科医院が材料費の高騰に頭を抱えている現状です。

ちなみに、最近「保険の銀歯は体に良くない」という記事が週刊誌にたびたび掲載されています。インチョーの愛読する週刊文〇にも以前載っていました。確かにパラジウムは金属アレルギーの原因になりますし、セメントとの接着や物性に問題はあります。しかし、実際の臨床で金銀パラジウム合金の銀歯とセラミックの歯との寿命や為害性の差を証明した研究はありません。一度治療した被せものや詰めものの下からでできる二次カリエス(2回目のむし歯)は大きな問題ですが、素材の違いでそれが起こると証明した文献は見たことがありません。いわゆるエビデンスのない話なのですが、こういった話題に有名週刊誌が飛びつくというのは、いかがなものでしょうか。